ほかの年
第三十六回ハワイ国際映画祭
November 03, 2016 |  アメリカ・ハワイ

AFAAはハワイ国際映画祭とコラボして、この有名な映画祭で評判のいい映画が7作も上映できた。ハワイ国際映画祭はアメリカと世界中の観客に積極的にアジア映画を紹介するという姿勢を貫いてきた。毎年約7万人の映画ファンが映画祭に参加し、Samuel L. Jackson、マギー・チャン、Zoe Bell、渡辺謙、浅野忠信、メイベル・チャン、広末涼子や大物の映画人も含まれる。

そのほか、映画祭では、香港アクション映画界で新しい歴史を刻んだヒット作《大酔侠》(1966、監督/キン・フー)を上映し、カリスマ・武侠アクションの女王といわれる主演女優のチェン・ペイペイ氏に、マスタークラスの進行してもらった。チャン・ツェー監督の《大女侠》、アン・リー監督の《グリーン・デスティニー》やホン・カウ監督の《追憶と、踊りながら》など映画での撮影エピソードを含めて世界中で活躍していた大女優のキャリアと、映画史上初のアクション女優になった感想を語ってもらった。この回のマスタークラスはハワイ国際映画祭で伝説的な中国監督、キン・フー監督へ敬意を表すイベント・シリーズの一つである。この回の映画祭も、「香港映画:現在と未来」座談会を行い、ゲストとして、《ハリウッド・リポーター》の記者Clarence Tsui、《一念無明(原題)》(2016)のウォン・ジョン監督(香港)と脚本のフローレンス・チャン氏(香港)を招いた。

アジア・フィルム・アワード・アカデミーはハワイ大学マノア校とハワイ・パシフィック大学とアジア映画上映会を共同開催し、地元の学生及び留学生に各地域の映画に対する認識を深めさせることを目指す。

イベント/映画一覧
《大酔侠》.武侠アクションの女王チェン・ペイペイ氏のトークイベント

監督:胡 金銓(キン・フー)
主演:チェン・ペイペイ、 ユエ・ホア、チェン・ホンリエ
香港、中国大陸/1966/91分間
北京語(英語字幕付き)

あらすじ
“玉面虎”率いる盗賊団は、総督の息子である行政長官の一行を襲撃して長官を人質に奪うと、先に投獄されていた盗賊団の首領の解放を要求。そんな中、長官の妹である腕利きの女性剣士“金燕子”は、敵のアジトへ単身潜入。“玉面虎”たちとの戦いで毒針を身に受け、深手を負った彼女を、酔いどれの無宿人が助け出すが、実は彼こそ世に名を知られた武術の達人、“酔侠”その人だった。2人は力を合わせて盗賊団との戦いに挑む。

見どころ
ショウ・ブラザーズによる名作、伝説の映画監督キン・フーが作った《大酔侠》は武俠映画に深い影響を与えた作品の一つ。チェン・ペイペイはこの作品の中で演技が人目を引き、有名になった役の「金燕子」がきっかけに「武侠女王」と呼ばれてきた。1960-70年間、武侠アクション映画を主演し続け、 ショウ・ブラザーズが盛んになっていた時代に女性侠客を務めている作品が多く残った。

九龍猟奇殺人事件

監督:フィリップ・ユン
主演:郭富城( アーロン・クオック)、春夏(ジェシー・リー)、白只(マイケル・ニング)、邵美琪 (マギー・シュウ)、譚耀文( パトリック・タム)
香港、中国大陸/2015/121分間
広東語(英語字幕付き)

あらすじ
16歳の少女ジェイメイは、中国大陸出身で2009年に家族と香港に引っ越し、モデルになる夢を持つが、いつしか援助交際で売春を繰り返すようになり、やがて何者かに殺された。少女がどのように売春にまで堕ちたか、チョン刑事(アーロン)がいかに事件の真相を求めて執念深く捜査を続けるか、時系列を交錯させながら描いていくように撮影のクリストファー・ドイル氏の変化に富むカメラに収められた。本作は、 アーロン・クオックが今までの俳優キャリアで頂点に達した作品であり、けいれんや憔悴などのボディーランゲージで風変わりなベテラン刑事イメージを表現していた。舞台劇俳優のマイケル・ニングも素晴らしい演技力を見せて、演じた殺人犯は観客に寒気を起こらせた。

「香港映画:現在と未来」座談会

《ハリウッド・リポーター》の香港駐在記者Clarence Tsui、香港の映画監督であるウォン・ジョン監督とハワイ国際映画祭ディレクターAnderson Leが一緒に《九龍猟奇殺人事件》の製作過程をめぐって語り、中国映画業界の変化が香港映画製作チームにもたらした課題と海外映画発行におけるトレンド変化など、香港映画業界の現況について分析。

クリミナル・アフェア 魔警

監督:ダンテ・ラム
主演:思漩 (クリスティー・チェン)、張家輝 (ニック・チョン)、廖啟智( リウ・カイチー)、安志杰 (アンディ・オン)、呉 彦祖(ダニエル・ウー)
香港、中国大陸/2014/112分間
広東語(英語字幕付き)

あらすじ
香港有名な監督ダンテ・ラムは各ジャンルの映画の長所を生かすことが得意で、過去数年間は大ヒット作を多く制作してきた。総合格闘技映画《激戦 ハート・オブ・ファイト》に引き続き、ジャンルが違う《クリミナル・アフェア 魔警》で再び有名な香港俳優ニック・チョンを起用した。心理描写にホラーとアクションを加え、警官の精神がストレスに追い込まれて正気を失っていく話である。
閑職に追いやられた香港警察の警官デイブ・ウォン(ダニエル・ウー)は真面目な性格をしていて、病院の警備を担当していた。ある日、重傷の男、ホン(ニック・チョン)の輸血に協力した際に、どこかで見た顔だと感じる。その後、香港警察の特捜部の連中が現れ、ホンは武装強盗団「鬼王党」のリーダーであることが分かった。デイブの警察同僚は、警察を殺したホンを助けたデイブを軽蔑している。ホンが逃げてから、デイブは大きなストレスを抱え、過去のトラウマに苦しみながら、武装強盗団のメンバーの相次ぐ死亡事件を調査するため、正気を失いかけた。

見どころ
《クリミナル・アフェア 魔警》は優秀なアクション、撮影と演技力を融合し、一般的な刑事映画より見応えがあると思われる。監督は中国人観客の好みだけに合わせていなく、商業映画から離れた新しいチャレンジをしていた。

野火

監督:塚本晉也
主演:塚本晋也、中川雅也(莉莉.弗蘭奇リリー・フランキー)、中川達也、中村優子
日本/2014/108分間
日本語(英語字幕付き)

あらすじ
第2次世界大戦末期、日本兵がフィリピン・レイテ島に滞留。通信が中断されて食料も困窮している最中、正気を失う人もいたら、肉を喰うために他人を殺害する人もいた。暴力と絶望に囲まれている中、結核を患った田村一等兵(塚本晋也)は、部隊から離れることにして、原野を彷徨うことになる。

見どころ
塚本監督の《野火》は戦争をもって人間性にある極端な一面を暴露してみた。他の現代戦争映画に比べると、本作は戦争を美化としようとしないし、残酷な暴力シーンも見せてくれた。視聴者はアメリカのテレビドラマ《ウォーキング・デッド》で死体や内臓だらけの衝撃シーンを見慣れているだろうが、本作は現実味を帯びた撮り方でより衝撃的なシーンになる。塚本監督は一般の物語り方をやめ、主人公が生きるために悪戦苦闘して正気を失っていきそうな経歴に重点を置く。戦争が混乱に陥って狂いが生じたら、性格の温厚さもすり減られてなくなり、主人公もやがて人間らしい心も失っていき、本当の「歩く屍」のようなものになってしまった。

インサイダーズ/内部者たち

監督:ウ・ミンホ
主演: イ・ビョンホン、 チョ・スンウ、 ペク・ユンシク
韓国/2015/130分間
韓国語(英語字幕付き)

あらすじ
原作は漫画家ユン・テホの同名ウェブ漫画で、韓国ではR指定作品として歴代最高の観客動員数を記録した映画である。財界・政界・メディアが裏金によって国を牛耳ろうとしたことを掘り下げて暴こうとした。財閥系自動車会社の会長の裏金と新聞社祖国日報の主幹の支援により、大統領選挙を控えるチャン・ピル議員が大統領に当選するまであと一歩。野心家である検事のウ・ジャンフンは、腕を切り落とされてしまったアン・サングに復讐を持ちかけ、スキャンダルを暴こうとする。(アン・サングは西部劇映画『荒野の七人』のリメイクとなる《マグニフィセント・セブン 》にも出演した大スター、イ・ビョンホンが演じる)

見どころ
少し前までは、韓国で財閥を批判することは考えられないことだった。だけど、近年はこのように問題を暴露する作品は多くなった(リュ・スンワン監督の『ベテラン』など)。『インサイダーズ/内部者たち』は韓国財閥を批判する最新作であり、物語の中では大企業の経営陣が横暴で勝手なまねをし、面構えも凶悪であり、まるで悪魔のように見える。

生と死と、その間にあるもの

監督:ニーラジ・ガイワン
主演:リチャ・チャッダー、ヴィッキー・コウシャル、サンジャイ・ミシュラー、パンカジ・トリパティ、シュウェター・トリパティ
インド/2015/103分間
ヒンディー語(英語字幕付き)

あらすじ
《生と死と、その間にあるもの》の原題は「火葬場(Masaan)」である。この作品は、独立なラブストーリーを交差させた物語である。インドのヴァーラーナシーとガンジス川沿いにある遺体が燃やされる火葬場、「ガート」といった妙なところを背景に、インドの若者たち数人は古めかしい道徳観念、カースト制度などインド社会の掟に対抗しようと頑張っていた。本作は、新世代の独立映画トレンドに持ち出された衝撃作品になり、個人自由を奪ってしまう陳腐な社会規範を批判していると思われる。
映画の初めに、若いカップルがホテルで逢瀬を楽しんだら、警察が踏み込んできた。主人公が悪罵、暴行と脅迫を受けたあげく、刑務所に入れられた。
控えめで穏やかな性格をしている女優、リチャ・チャッダーが演じる「デヴィ」という役は、教育を受けたことがあり、非常に冷静な女子である。警察には「好奇心」だけでホテルまで行ったと供述。デヴィの父親は若い頃はサンスクリットを教えていた大学教員だが、今は「ガート」にいるただの呼び売り商人である。なのに、スキャンダルの広がりを食い止めるために、警察に賄賂として大金を渡さなければならないことになった。
二番目の物語は、イケメンでSNSで活躍している主人公のディパクが友達との賭け事から展開。美女のシャルにフェイスブックで友達申請をしてみたことがきっかけに、ディパクはシャルと付き合うことになった。しかし、シャルは裕福な中産階級でカースト制度ではディパクより階級がはるかに高い。ディパクの家は代々「ガート」で遺体を焼くことを家業とし、残骨灰から金銭など価値あるものを拾って生計を立てている。二人の家柄があまりにも違いすぎて、前途多難な関係になりそうだ。

見どころ
主演俳優らは若いながら演技が素晴らしく、役の感情を豊かにした。ガンジス川の夜を照らす篝火が記憶に残るほど奇妙な光景になる。それは壮大な景観を撮るのが得意なAvinash Arun Dhaware氏のお手柄である。一方、ニーラジ・ガイワン監督は長編映画初監督作《生と死と、その間にあるもの》で世間を驚かし、カンヌ映画祭で初上映後、「ある視点」部門の「有望な未来特別賞」と「 国際映画批評家連盟賞」を受賞した。今後の作品は期待できる。

スナップ

監督:コンデート・ジャトゥランラッサミー(Kongdej Jaturanrasamee)
主演:ワラントーン・パオニン、トーニー・ラークケーン
タイ/2015/97分間
タイ語(英語字幕付き)

あらすじ
26歳のヒロインはインスタグラムにハマっていて、迫ってきた婚姻に対して躊躇っている。大物インディペンデント映画脚本家と監督であるコンデート・ジャトゥランラッサミー監督が《TANG WONG(原題)》に引き続き、《スナップ》といういい良作を仕上げた。《スナップ》は2014年タイ軍事クーデターを背景にして、政情が不安定な状況で、国民が異なる政治的見解で喧嘩してしまうような雰囲気の中で、複数の若者が自分を探し続けるという魅力的な物語である。
ヒロインのプンは大佐の娘であり、将来有望な中尉と婚約をしている。戒厳が施行された日に、母校で行われる同級生の結婚式の招待状を受け取った。それに出席のためにチャンタブリーに戻る途中、高校の初恋の相手と再会し、当時の思いをよみがえらせていき、ヒロインは婚約者がいながら動揺してしまった。

見どころ
《スナップ》は純愛とタイのミレニアル世代が直面している問題について物語っている。岩井俊二監督の映画を彷彿とさせる。本作は人の心に触れられ、演技がとても自然で、特に同窓会のシーンが感動させてくれる。「もしあの時はこうしたら」というノスタルジア感情が作品の中で広がり、テクノロジーが発達している社会でありながら不安定な政治環境の中、生き方を探っていく。観客の印象に強く残る作品になると思われる。